司法書士の仕事は、各官公署へ提出する書類の作成やその手続きを代行する仕事です。
大まかに分類すると、不動産登記業務、商業・法人登記業務、裁判手続きに関する業務、成年後見に関する業務、相続・遺言に関する業務、供託業務、その他の業務などが挙げられます。
不動産登記業務
例えば、土地・建物を買いたいAさんと、土地・建物を売りたいBさんがいます。
AさんとBさんは、Bさん所有の土地・建物を売買することを合意しました。
売主Bさんは、土地・建物を買ったとき住宅ローンを組みましたが、まだ完済していないので、土地・建物には金融機関の抵当権が残っています。
買主Aさんは、住宅ローンを組んで土地・建物を買いますので、金融機関の抵当権を新たに設定する必要があります。
この場合の登記は、
1.売主Bさんが組んだ住宅ローンの抵当権の抹消登記
2.売主Bさんから買主Aさんへの所有権移転登記
3.買主Aさんが組んだ住宅ローンの抵当権の設定登記
の3件の登記申請をする必要があります。
このように登記申請をすることにより実体上行われた法律行為を法務局の登記記録に正しく反映させ、その法律行為を公示することが司法書士の不動産登記業務になります。
ただし、単に登記をすればいいのではなく、その事前確認、すなわち、この法律行為が適法に行われたか、登記申請に必要な書類は揃っているかなどを事前に確認ある必要があります。どちらかというとこの確認することの方が重要になってきます。この確認を怠ったり、不十分であると、法律行為が無効のため効力を生じなかったり、取消等の対象になったり、また、登記申請書類に不備があるため登記申請が通らないという事態が生じてしまったりしますので、円滑な不動産取引を阻害することになります。また、司法書士の職責にも反することになります。
このような事態が生じた場合、司法書士は損害賠償を請求される可能性があり、特に不動産取引は高額ですので、その請求額も高額になる恐れがあります。
商業・法人登記業務
商業・法人登記は、各種会社や法人に関する取引上重要な事項、例えば、商号・名称、本店・主たる事務所、資本金の額等、目的、代表者の住所氏名などを法務局の登記記録に記録し、一般に公示する役割を持っています。
新たに会社等が設立されたり、また、既存の会社等の商号・名称、本店・主たる事務所、目的、代表者などに変更が生じた場合には、その事由を登記記録に反映させ、公示することが司法書士の商業・法人登記業務になります。
その際、登記申請するだけではなく、法的判断を要する議事録などの登記申請に必要な書類の作成や依頼者が作成した議事録等の更正などの作業も依頼の趣旨によっては必要になる場合があります。また、例えば、会社等の設立に際し会社の種類や会社の規模に応じた会社の機関の設計などについて助言を行ったり、その内容に沿った定款の提案をしたり、設立までの必要な手続き・日程等を説明したりするなど、商業・法人登記に関する業務全般に関与しています。
さらには、企業法務や組織再編、事業承継などについても経営者から相談を受けることがあります。
裁判手続きに関する業務
司法書士は、裁判所に提出する書類、例えば、民事訴訟をするための訴状や準備書面、答弁書、民事調停をするための申立書、相続放棄や成年後見に関する申立書、支払督促や強制執行に関わる書類などを作成することを業務としています。
また、法務大臣から簡裁訴訟代理等関係業務の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所で取り扱うことができる、訴訟の目的の価額が140万円超えない民事事件等については簡易裁判所において代理人となることもできます。
債務整理についても司法書士は業務として行うことがあります。
債務整理とは、例えば何社からも消費者金融などから借金をして返済ができなくなったり、返済が苦しくなった債務者のために、消費者金融などの債権者との個別交渉や裁判所への手続きを通じて債務者の経済的負担を軽減させることを目的とするものです。以下の手続きがあります。
1.任意整理
司法書士が債務者を代理して債権者と交渉し、裁判外で和解をします。
2.過払い金返還請求
多く払いすぎた利息を、裁判所への手続き若しくは裁判外の交渉で返還請求します。
上記1.2.の業務は、法務大臣から簡裁訴訟代理等関係業務の認定を受けた司法書士で、目的の価額が140万円超えない事件について取り扱うことができます。
3.破産手続き
裁判所に申し立てて、債務者の財産を処分して、債務の支払いの免責を得る手続きです。
4.個人再生手続き
裁判所に申し立てて、裁判所の認可を受けた返済計画により返済をし、本来の債務額の減額をする手続きです。
上記3.4.の手続きは、裁判所に提出する書類を作成することが業務になります。
成年後見に関する業務
成年後見制度には大きく分けて、以下の2つの制度があります。
1.法定後見制度
認知症や精神障害などの理由で、判断能力が不十分となり、自己の判断で自己の財産の管理処分が困難になった本人のために、家庭裁判所が、本人の能力に応じて、後見人や保佐人、補助人
を選任をして家庭裁判所の監督の下で本人を支援する制度です。
2.任意後見制度
将来、自己の判断能力が不十分となったときのために、後見人や支援内容を決めておく制度です。
司法書士はこの後見制度に深く関わっています。後見制度に関する相談から、家庭裁判所に提出する申立書類の作成、また、司法書士が後見人、保佐人、補助人に選任されることも多くあります。
相続・遺言に関する業務
司法書士は、相続が発生した場合、不動産登記業務の1つになりますが、不動産の登記名義を相続人にする相続登記の申請手続きを行います。また、これに付随する業務として、相続人の調査や遺産分割協議書の作成を行います。
これ以外にも、相続放棄の申立、相続人の中の未成年者のための特別代理人の選任の申立、自筆証書遺言書の検認申立、遺言執行者選任の申立など家庭裁判所に提出する申立書類の作成を行います。
さらに、遺言書の作成に関する相談にも応じています。
供託業務
例えば、建物の賃貸借関係において、家主が家賃を受け取らない場合、このまま放っておけば延滞金が発生してしまいます。このような場合、借主は、家賃を国に供託すれば家賃を支払ったことになり延滞金は発生しません。これを弁済供託といいます。供託には他にも種類がありますが、司法書士は、この供託手続きを本人を代理して行います。
その他の業務
1.筆界特定手続き
自分の土地と隣の土地の境界が明らかでないとき、法務局に筆界特定の申請をすることにより、正しい筆界を特定してもらうことができます。法務大臣から簡裁訴訟代理等関係業務の認定を
受けた司法書士は、対象土地の価額が5600万円以下の筆界特定の代理人として手続きを行います。
2.帰化申請手続き
司法書士は、外国人の帰化申請の相談に応じています。
3.検察庁に提出する書類の作成
検察庁に提出する書類としては、告訴状、告発状などがありますが、司法書士は、これらの書類の作成も行います。
4.審査請求
司法書士は、法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続きについて代理します。
5.債権譲渡/動産譲渡登記
債権譲渡登記制度は,法人がする金銭債権の譲渡などについて,登記によって確定日付ある証書によって債務者に対する通知あったものとみなされ、債務者以外の第三者に対する対抗要件を簡便に備えるための制度です。
動産譲渡登記制度は,法人が有する在庫商品、機械設備、家畜等の動産を活用した資金調達の円滑化を図るため,法人がする動産の譲渡について,登記によって動産の引渡しがあったものとみなされ、簡便に第三者対抗要件を備えることを可能とする制度です。
司法書士は、この債権譲渡・動産譲渡登記の手続きについて代理します。